2025年2月現在、日本国内における生成AI利用に関する法規制とガイドラインは急速に進化しています。
特に地方自治体における生成AIの活用は注目を集めており、セキュリティと効率性のバランスを取るための取り組みが進んでいます。

本記事では、最新の動向と具体的な取り組みについて詳しく解説します。

1. 国内のAI関連法規制の現状

日本では現在、AIに特化した包括的な法律は存在していません。
代わりに、ガイドラインを中心としたソフトローによる自主規制アプローチが採用されています。
主要なガイドラインには以下のものがあります。

  • AI事業者ガイドライン(第1.0版):2024年に経済産業省と総務省が発表
  • 人間中心のAI社会原則(2019年、内閣府)
  • AI利活用ガイドライン(2018年、総務省)
  • AI原則実現のためのガバナンスガイドラインVer1.1(2022年、経済産業省)

これらのガイドラインは、AIの倫理的利用を促進することを目的としています。

2. 地方自治体におけるAI利用の課題

地方自治体がAIを活用する上で、主に以下の課題が挙げられています。

  1. データセキュリティ:住民基本台帳や税務情報など、極めて機密性の高いデータを扱うため、情報漏洩のリスクが大きな懸念事項となっています。
  2. 職員のAI活用スキル:多くの自治体で、職員のAI活用スキルが不足しており、効果的な利用が進んでいません。
  3. 完璧主義:自治体職員が生成AIの回答に完璧を求めすぎるあまり、活用が進まないケースがあります。

3. 最新の取り組みと解決策

3.1 LGWAN ASPサービスの活用

地方自治体向けの閉域網であるLGWAN(総合行政ネットワーク)を活用したAIサービスの提供が始まっています。
例えば、2025年1月8日には、生成AIサービス「GaiXer」がLGWAN ASPサービスに登録されました。
これにより、インターネットアクセスが制限された環境下でも、安全に生成AIを活用することが可能になりました。

3.2 専門AIの開発

地方自治体や省庁向けの専門AIの開発も進んでいます。
例えば、「コモンズAI」は、政策の根拠となる過程やデータソースについて説明できる推論機能を搭載しており、行政特有のニーズに対応しています。

3.3 法的整備の動き

鳥取県では、AIによって生成された児童の性的画像の提供要求を禁止する新たな条例改正案が発表されました。
これは、生成AIの悪用を抑止するための法整備の一例であり、他の自治体にも影響を与える可能性があります。

3.4 ガイドラインの整備

個人情報保護委員会が「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」を発表し、生成AIサービスの利用にあたって事業者・利用者それぞれが留意すべき事項を明確化しています。

4. 今後の展望

2025年に成立、2027年に施行が見込まれる改正個人情報保護法では、「データ利活用に向けた取組に対する支援等の在り方」が検討項目に含まれています。
これにより、生成AIの利用に関するより具体的な法的枠組みが整備される可能性があります。

5. 地方自治体におけるAI活用のベストプラクティス

  1. セキュリティ重視:LGWANなどの閉域網を活用し、機密情報の保護を徹底する。
  2. 段階的導入:完璧を求めすぎず、小規模なプロジェクトから始めて徐々に拡大する。
  3. 職員教育:AIリテラシー向上のための研修プログラムを実施する。
  4. ガイドライン遵守:国や自治体が定めるAI利用ガイドラインを厳守する。
  5. 専門AIの活用:行政特有のニーズに対応した専門AIを積極的に導入する。

まとめ

日本の地方自治体における生成AI利用は、セキュリティと効率性のバランスを取りながら着実に進展しています。
LGWAN ASPサービスの活用や専門AIの開発など、具体的な解決策が提示されつつあります。
一方で、法的整備はまだ発展途上であり、今後の動向に注目が集まっています。

地方自治体は、これらの最新動向を踏まえつつ、慎重かつ積極的にAI活用を進めていくことが求められます。
セキュリティを最優先としながらも、業務効率化や住民サービスの向上につながるAI活用の可能性を探求し続けることが、今後の地方行政の発展に不可欠となるでしょう。